Welcome Aboard -旅するために旅をする

現在、絶賛無職中の僕が、世界中を旅するブログです。

・毛沢東の肖像画

ショウと別れたその日、僕は恭子さんと再会した。
恭子さんは、僕の母と同年代の女性で、とてもパワフルな人だった。僕は個人的に彼女のことをゴッド恭子とかマザー恭子とか呼んでいた。
初めて会ったのは僕らが大学2年生のタイ研修の時だった。
タイ研修は僕が所属していた赤石ゼミとうちの大学が社会人向けに企画していたアジア塾との合同で企画されていた。研修から帰ってきても僕らの交流は続き、恭子さんは折を見て赤石ゼミの集まりに顔を出してくれ、僕らも恭子さんがやっている社交ダンスを見に行ったりした。社会人になってからは大阪に遊びに来てくれたこともあった。
恭子さんは、僕が同じ赤石ゼミで友人の李 嘉王其(リ・カキ)に会いに行くタイミングで、僕とカキに会うために来てくれたのだ。
恭子さんと空港で合流した後で、カキに会いに行った。
カキは僕らのお姉さん的存在で、活動的であり、僕が箸にも棒にも引っ掛からなかった卒論の賞を取るぐらい優秀な人でもあった。そして、優秀だけど面倒見が良く、気さくな人柄で僕らはみんなカキのことが大好きだった。僕らは久しぶりの再会を喜びあった。夕食はカキが奢ってくれた。その後で宿泊するホテルに移動した。外観が見えてきた時点で嫌な予感がしていたのだか、到着して確信に変わった。そこは高級の上に超が着くほどのホテルだったのだ。これからホテルの一室を3人でシェアする予定だったのだが、これは3で割っても1泊100元や200元(2000円、4000円)じゃきかないぞと青ざめた。
今さら別のホテルに移りたいとも言えず、昨日まで一泊1000円ほどの安宿に泊まっていた僕が今日からいきなり高級ホテルに泊まるなんて、人生何が起こっても不思議じゃないなとおかしくなった。僕は覚悟を決めてホテルに泊まることにした。
しかし、僕の心配は完全に杞憂に終わった。このホテルの地下には京劇(中国の歌舞伎のようなもの)の劇場が併設されており、恭子さんが京劇を見たいとの理由でここを取ってくれていたのだが、彼女はすでに支払いを済まし、僕らが払うと言っても受け取らなかった。実は恭子さんと合流してから宿泊費だけでなく、移動費と食費代もほとんど払って貰ってしまい。おんぶにだっこの三冠を達成してしまうこととなった。情けないやら有難いやら胸がいっぱいになった。「また働き始めたら東京で奢ってちょうだい」とだけ言われ、僕は固く約束した。果たしてそんな日がいつかくるのだろうか。。
僕らは北京オリンピックのメーン会場である鳥の巣やカキが以前住んでいた建国門の街を練り歩いた。一人旅の気楽さも良かったが、連れがいることの楽しさと安心感を僕は実感した。
夜は3人で酒盛りをしながら色々な話をした。
9月3日が中国の国家勝利記念日らしく、共産党に反対する人達はこの時期に活動が活発になること。三庄里で無差別殺傷事件が起こり、それが共産党に反対する人の犯行であること。ネットで事件が報道されたが、直ぐに報道規制されたこと。天津の爆発事故も時期的にテロでないかという疑惑があること。長寿番組の司会者が、宴席で毛沢東を茶化した歌を歌って、それがネットにアップされてしまい業界から完全に消えたこと。習近平になってから共産党内部の腐敗が厳しく取り締まられ始めたこと。それでも汚職がたえないこと。それじゃあ意味ないよねと言うこと。などなど。どれも興味深い話しだった。
恭子さんと一緒に故宮博物院天安門広場に行った。
天安門には毛沢東の肖像画が掲げられていた。
その昔、ここに掲げられている肖像画を観たビートルズは中国の権威主義を皮肉り「毛沢東の肖像画を掲げても世界は変えられないよ」と言った。
毛沢東文化大革命は封建的文化、資本主義文化を批判し、新しく社会主義文化を創造しようと言う趣旨で始まったものの、蓋を開ければ中国人同士が殺しあい100万人が処刑された。宗教的なもの、文化的なものもかなり破壊されてしまった。
しかし、残念ながらそんな文化大革命を経験しても現在の中国を見てもわかるように「より良い社会を生み出すこと」はできなかった。
中国の覇権主義は現在、アジアに暗い影を落としている。
ビートルズのように何か言おうか。。
今の僕ならこの国を何て言おう。。
僕は中国の文化が好きだし、中国人も大好きだ。
それでもこの広大なはずの国で一種の息苦しさを感じた。
酒が子供にとって毒であるように中国に民主化は時期尚早なのだろうか。そう、今は時期ではないかも知れない。しかし、いつか本当の意味でこの国が「より良い社会」になることを願っている。

書いていればきりがないのでこの辺で北京編を終わりにしようと思う。この後、香港・マカオ編、東南アジア編、南アジア編、中東編、ヨーロッパ編に続き、仁義なき広島死闘編には続かないけど、お金と僕の気持ちが続く限り旅を続けようと思う。
読んでくれて、ありがとうございます。
それでは、また!



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